活動報告
第4回ETJP全体ミーティング
- 日時:2004/03/19(Fri) 13:45〜16:00
- 場所:三菱商事ビル本館
ENUMトライアルジャパン(会長 後藤滋樹・早稲田大学理工学部情報学科教授、以下「ETJP」)では3月19日、三菱商事ビルにおいて第4回ETJP全体ミーティングを開催しました。今回は、約60名が参加、会員からの情報提供や提案発表を行いました。
▼ 第1部「会員からの情報提供」
今回は、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の上野氏による「IETF報告」、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)の米谷氏による「JPRSからの国内外におけるENUM活動状況報告」、およびJPRSの前畑氏による「フェーズ2の実験用番号登録仕様」の3つの報告に加え、WIDE Projectの砂原氏による「IPネットワーク上でのライフラインの実現」をテーマにした発表が行われました。
上野氏の報告は、2004年3月3日に韓国のソウルで行われた第59回IETF MeetingにおけるENUM WGの模様を伝えるものです。RFC2916bisの発行が遅れている理由、IFAX(*1)やpresense(*2)といったENUMサービスタイプの登録に関するI-D(Internet Draft)報告があったことや、中国、日本、韓国、オーストリア各国によるENUMトライアル報告が行われたことなどが報告されました。
続いて、JPRSの藤原氏から、ENUMアプリケーション実装時に発見した問題点を明確化し、その解決策を提案したという報告が行われました。これは、RFC2916bisとDDDS関連のRFC(RFC3401〜3404)の実装時解釈の曖昧さの問題としてLawrence Conroy氏のI-Dに付加されたのちにENUM WGで正式採用されることになったということです。
(*1) IFAXサービス:E-mailをベースとしたFAXサービス
(*2) presenseサービス:他のユーザの接続状態を監視するサービス
砂原氏の発表は、110番や119番といった緊急通信を題材に、インターネットがコミュニケーションライフラインとしての役割を果たすために必要な機能や動向についての研究に関するものです。インターネットではノードのIPアドレスとその地理的位置情報を管理する仕組みが無いこと。そのため、現時点では緊急電話のような地域と密接に結びつく仕組みを実現することが難しいことなどが説明され、郵便番号をENUM Like Treeで使い、地域を特定する方法を検討、実装し、有効性を評価したことなどが報告されました。緊急電話は発信者の居場所により管轄都道府県の組織に自動的に接続する必要があるが、それをIP電話でどのように実現するか、また、混雑したネットワークの中で、どのようにして緊急通信を優先させるか、品質評価でぎりぎりの音質が確保できる限界といった話題が織り込まれていたことから、会場から多くの関心を集めていました。
米谷氏の報告は、JPRSが開発しているENUM Clientの最新状況について、KRNICとのENUM DNS関連の覚書締結について、そして、APRICOT 2004で結成に向けて動き出したAPETF(Asia Pacific ENUM Technical Forum)の3点について行われました。
ENUM Clientについては、2次開発がほぼ終了し、機能拡張と新APIを追加したこと。KRNICと、ENUM DNS関連技術の開発と実験について協力を約束したこと。そして、その覚書の内容を発展させる活動の1つとして、今年6月頃に発足予定のアジア地域のccTLDの技術者を中心としたENUM技術交流チームAPETFに関する概要が報告されました。
前畑氏の報告は、フェーズ2における実験用番号登録仕様について、フェーズ1からの変更ポイント、具体的な登録手順などに関するものです。フェーズ2では、会員の持つネームサーバの登録が可能となり、Tierを分割できるようになることでより幅広い実験ができるようになるとの説明が行われました。
▼ 第2部「会員からの提案」
WIDE Projectの石田氏よりPandS-WG(プライバシやセキュリティに関するワーキンググループ)の活動報告と、JPRSの藤原氏よりDNS-WGの活動計画(チャータ)の見直し提案が行われました。
石田氏からは、様々な事情により活動が進捗していないが、今後はミーティングを開催して、活動を進めていきたい予定である旨の報告がされました。
藤原氏からは、DNS-WGの活動計画の見直し(リチャータ)提案が行われ、新しい活動計画が全会一致で承認されました。主要な見直し箇所はセキュリティに関する部分で、ENUM DNSでDNSゾーンに権限を持つ管理者が、公開暗号鍵技術を用いて自らのゾーン情報に署名を行うDNSの運用方式であるDNSSECを用いるようになっています。同時に、活動概要として、日本国内で展開しうるENUMのDNSモデルを定義し、要求仕様と評価基準を作成し、現在のDNS実装を性能評価することに加え、DNSSECへのENUMへの適用についての検討と評価を行なうということも提案されています。
続いて、活動の一環となる補足説明としてJPRSの森氏より「ETJP Phase2におけるDNSSEC実験運用について」と題して、DNSSECの概要説明、実験の手順、システム構成図、計画概要などが説明され、会員に実験参加の要請を呼びかけました。
今後は、今回承認された新しい活動計画に基づいて活動が行われていくことになります。
次回は、2004年5月12日(Wed)の午後に、第5回ETJP全体ミーティング、ならびに第1次報告会を早稲田大学理工学部で開催する予定です。
- 第4回ETJP全体ミーティングアジェンダ
- 会員からの情報提供
- 「IPネットワーク上でのライフラインの実現」 (砂原秀樹氏/WIDE)
- IETF報告 (JPNIC)
- JPRSの国内外におけるENUM活動状況報告 (JPRS)
- フェーズ2の実験用番号登録仕様 (JPRS)
- 会員からの提案
- Pands-WG
- DNS-WG (JPRS)
- 第5回ETJP全体ミーティングのお知らせ (ETJP事務局)
上野晶久氏 (JPNIC) |
砂原秀樹氏 (WIDEプロジェクト) |
米谷嘉朗氏 (JPRS) |
前畑淳也氏 (JPRS) |
石田慶樹氏 (WIDEプロジェクト) |
藤原和典氏 (JPRS) |
森健太郎氏 (JPRS) |
会場風景 |