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活動報告

第8回ETJP全体ミーティング報告

  • 日時:2006/09/20(Wed) 10:30〜12:15
  • 場所:株式会社日本レジストリサービス 会議室

■ 第1部「情報提供」

ENUMトライアルジャパン(会長 後藤滋樹・早稲田大学理工学部情報学科教授、以下「ETJP」)では9月20日、株式会社日本レジストリサービス会議室において第8回ETJP全体ミーティングを開催しました。今回は19組織(内会員18)から42名(内会員41名)の参加があり、情報提供、日本ENUMトライアルについての現況報告に続き、ETJPの活動の進め方についてディスカッションを行いました。

▼ SIPit18参加報告

山崎氏からは、2006年4月に東京で開催された「SIPit18」にETJPとして参加したことについて報告が行われました。SIPitとは、SIPを実装したネットワーク機器間で相互接続性の確立を目的として年に2回程度、世界各地で開催されている相互接続イベントです。SIPit18では、JPNICがローカルホストとしての役割を担いました。75組織、160名以上の参加者数を得ることができ、そのうちの約3分の1が日本からの参加でした。

このイベントにETJPとして参加した背景には、2005年11月に総務省がITUより日本のENUMトライアル用番号空間の割り当て委任を承認され、ENUM DNSを使って実験を行う環境が整ったことがあります。国内および海外から関係するさまざまなベンダーが集結することから、国際的な環境での接続実験を行い、ENUM実装上の課題調査をするよい機会となりました。

接続試験では複数のパターンを実施し、そのうち海外との接続についてはスウェーデン在住の個人の方と接続を行うことができました。いずれのケースでも呼および通信には問題はありませんでしたが、ENUMの仕様理解不足と思われる挙動を示すSIP実装が見受けられました。ENUMそのものの実装とは直接関係ありませんが、より正しい実装をしてもらうための情報提供など、理解とモチベーションを高めるためにさらなる活動の必要性が課題として浮かび上がっています。

▼ IETF ENUM WG の動向(標準化動向)

藤原氏からは、この一年間におけるIETF ENUM WGにおける標準化動向についての報告が行われました。そのなかで、この一年に発行されたRFC、および標準化されたENUMサービスや議論中のENUMサービスについての解説に続き、インフラストラクチャENUMに関するラフコンセンサスの進展などについての報告が行われました。

そのラフコンセンサスとは、従来のe164.arpaを用いるENUMはユーザENUMであり、インフラストラクチャENUMは別のDNSツリー、すなわち、e164.arpaにサブツリーを作るか別のTLDを用意するというものです。この議論の進展に伴い、従来のENUMとしてユーザENUMを採用するかインフラストラクチャENUMを採用するのかといった議論は収束し、それぞれが併存していくことになります。また、ENUM標準を規定したRFC 3761に運用上の改良点が必要であることが判明し、ENUMプロトコル更新の議論が開始されました。解決案のひとつとして、SRVリソースレコードに似たURIリソースレコードを定義し、ENUMサービスごとに異なるドメイン名にURIを登録することことが提案されていますが、従来のENUM標準であるRFC 3761との互換性問題など、解決すべき課題があることが示されました。

また、遅延の影響を受けやすいリアルタイム通信の呼制御、経路制御のアーキテクチャを扱うWGとして「SPEERMINT WG」が2006年1月に設置されました。これにより、複数ISPの相互接続に関する問題の解決が前進することが期待されます。

▼ 各国のENUMの取り組み状況

根津氏からは、この一年間の海外動向について報告が行われました。

まず最初に、2005年9月の報告では30であったe164.arpaのデリゲーション組織数が新たに12組織加わり計42組織になったこと、その追加された組織のひとつに日本の総務省があることなどが伝えられました。そのうえで、いくつかの国を例にENUMの取り組みについて解説が行われました。

普及にあたってのさまざまな課題はありますが、デリゲーションを受けていない地域からのDNSの問合せがあることや、フリーソフトとSIPの組み合わせで高い利用知識をもったユーザが使い始めると普及する可能性が垣間見えること、次世代統合インフラを構築する一要素として利用される可能性があることなど、いくつかの傾向も見て取ることができます。

▼ SIProp(シップロップ)における「ENUMによるプロトコル変換Proxy」

情報提供の最後として、今村氏によるSIPropの解説が行われました。SIPropとは、VoIP(SIP)の相互接続問題を解決するミドルウェアとして、2006年度上期の未踏ソフトウェア創造事業に採択されたオープンソースプロジェクトです。

その中心的な機能は、制約を持った相互接続性の低いSIP-UAに対し、それらの仕様差を吸収するローカルプロキシとして動作し、プロトコル変換を可能とするものです。これにより、各UAや各網のSIPを標準化されたSIPに変換することが可能になり、世界的な関心事となっているVoIP相互接続問題の解決を図るという形を目指しています。

会場からは、マイルストーンや新しいリソースレコードへの対応などに関する質問が出され、関心の高さが示されました。

■ 第2部「日本ENUMトライアルについて」

続いてのプログラムは、「日本ENUMトライアル」の現況報告です。ここでは、日本ENUMトライアルの運用を行っている立場で、JPNICの根津智子氏による「1.8.e164.arpaのデリゲーションについて」と、JPRSの米谷嘉朗氏による「日本ENUMトライアルのDNS運用状況」が報告されました。

▼ 1.8.e164.arpaのデリゲーションについて

根津氏からは、ETJPが参加している「日本ENUMトライアル」について、その全体説明が行われました。日本ENUMトライアルとは、2005年11月に総務省がITUより日本のENUMトライアル用番号空間の割り当て委任を承認されたことを受け、日本国内のENUM実験参加者に81で始まる日本のE.164番号空間の一部を委任し、国際接続を含めたENUMの技術と運用の両局面における実験を推進することを目的とした活動で、その期限については総務省が別途定めることとなっています。

JPNICは、総務省からの委託を受け、ENUMトライアルの運用業務を行っており、今回はその報告となりました。

日本ENUMトライアルの実施モデルについてはTier 1を仮想的に2階層に分け、実験参加者にもTier 1になってもらえるような仕組みを採用したこと、割り振る番号は実験期間中の暫定的なもので、本トライアルでの実験目的での利用のみ認められていること、そして参加要件、申請の流れなどが解説されています。また、2006年2月の段階で、2組織(ETJP全体で100万番号、個人として今村氏が100番号)に割り振られていることが示されました。同時に、ETJP内では7組織、14万番号が割り振られていることが報告されました。

▼ 日本ENUMトライアルのDNS運用状況

米谷氏からは、日本ENUMトライアルで使用しているENUM DNSの運用と、その問合せ状況についての報告が行われました。DNSサーバは、2005年11月より東京と大阪で稼働しています。

それらのDNSサーバに対するDNSの問合せ状況についてはグラフ等で示されており、DoS攻撃らしきものなどの異常値を除去した後の評価で、全体的には日に100から200程度の問合せがあり、その約半数がNAPTRでした。

ENUMとして本来あるべき形でDNSが引かれていることが確認できましたが、問合せの多くは欧米からのものであり、国内からはまだ少ないこと、実在すると思われる電話番号のE.164番号が参照されているといった傾向が観測されています。

■ 第3部「ETJPの今後の進め方について」

プログラムの最後は、ETJP副会長の堀田博文氏(JPRS)による「ETJPの今後の進め方について」です。ENUMに関する活動が活況を呈していない状況で、今後、ETJPをどのように進めていくかについてディスカッションをすることを目的としています。

ETJPでは、ENUMの技術課題をトライアルするための組織として大きく3つのフェーズを設定しています。現時点では、そのフェーズの2つ目、ENUM上で通信サービスを動かす段階までは来ていますが、フェーズ3として設定したENUM上の通信サービスとその登録サービスを動かすまでには至っていません。そこで、ENUM技術やETJPの今後の進め方を検討するために2006年8月から9月にかけてETJPの47会員に対してアンケートを実施しましたが、有効回答数15会員(17名)を得て、その集計結果が今回発表されました。

将来ENUMは普及すると思う人が多いこと、情報交換や実験インフラとしての場としてETJPは有効との意見が多いことが確認されましたが、もっと課題整理や実験への取り組みが欲しいという意見などもあり、今後、事務局がそうした会員の具体的意向を個別にヒアリングを行い、会長、副会長、事務局で今後の活性化の方針をさらに検討していくこととなりました。

会場からは、日本での商用サービスがどのようにスタートされるのかのイメージが見えないことによる課題が出され、ETJPは技術トライアルを行う場でありビジネスを考える場ではないが、この場にいる人たちが感じ考えることを行政に伝えていく必要があるだろう、といったコメントがありました。

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